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福岡地方裁判所 平成3年(行ウ)18号 判決 1993年1月26日

原告

武井敏夫

右訴訟代理人弁護士

河辺真史

右訴訟復代理人弁護士

吉野高幸

被告

福岡県警察本部長

堀川和洋

右訴訟代理人弁護士

森竹彦

右訴訟復代理人弁護士

三ツ角直正

右指定代理人

中ノ森稠基

外二名

主文

一  本件訴えを却下する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が平成三年二月四日に原告に対してした、原告の運転免許の効力を平成三年二月四日から同年四月四日まで六〇日間停止するとの処分を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  本案前の答弁

主文同旨

2  本案の答弁

(一) 原告の請求を棄却する。

(二) 訴訟費用は原告の負担とする。

第二  当事者の主張

一  原告

〔請求原因〕

1 (本件処分の存在)

被告は、平成三年二月四日、原告に対し同日付運転免許停止処分通知書(福警運免第三八四三〇号)により平成三年二月四日から同年四月四日まで原告の運転免許の効力を停止する旨の処分(以下「本件処分」という。)をした。

2 (審査請求)

原告は、本件処分に不服であったので、同年三月二九日福岡県公安委員会に対し本件処分の取消しを求めて審査請求したところ、同委員会は、同年五月二七日付けで右審査請求を棄却する旨の裁決をし、右裁決書は同月二八日頃原告代理人方へ送達された。

3 (本件処分の違法性)

(一) 本件処分は、原告が本件処分前に左のとおりの道路交通法違反行為を行ったことを理由としてされたものである。

(1) 平成二年一月九日

信号無視赤色等

(2) 平成二年八月二一日

指定駐車禁止場所等

(3) 平成三年一月一一日

指定放置駐車違反 駐車禁止場所等

(二) しかしながら、(一)のうち(1)の違反事実は存在しない。

4 よって、右存在しない違反事実を前提としてされた本件処分は理由を欠き違法であるから、その取消しを求める。

二  被告

〔本案前の主張〕

原告は、本件処分の日から無違反、無処分で満一年間を経過し、これにより本件処分の効果は一切消滅している。

すなわち、原告は、右経過により、本件処分を理由に道路交通法上不利益をうける虞がなくなったことはもとより、他に本件処分を理由に原告を不利益に取扱いうることを認めた法令の規定はないから、行政事件訴訟法九条の適用上、原告は、本件処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有しない。

よって、本件訴えの却下を求める。

〔請求原因に対する認否〕

1 請求原因1、2及び3の(一)の各事実は認める。

2 同3の(二)の事実は否認する。

原告は、平成二年一月九日午前〇時一二分頃、北九州市小倉北区城内五番一号小倉北警察署交差点(以下「本件交差点」という。)において、普通乗用自動車(北九州五五う三六五〇号)を運転中、同所に設置されている信号機の表示する「止まれ」の信号に従わないで、第四車線を時速約五〇キロメートルで旦過方面から田町方面へ直進進行したところを、折から同交差点北側車線において北九州市警察部所属の交通取締用車(北九州八八さ五一八三号)に乗車し、信号停止中の警察官二名に現認され、信号無視として検挙されたものである。

第三  証拠<省略>

理由

一被告の本案前の主張について

1  原告が平成三年二月四日に被告から本件処分を受けたことは当事者間に争いがなく、<書証番号略>及び原告本人尋問の結果によれば、原告が講習を受けたことにより原告の運転免許停止期間は三〇日間短縮され同年三月五日をもってその期間が満了したこと、原告は本件処分の日から無違反、無処分で一年を経過したことが認められる。

2  右事実によれば、本件処分の効果は平成三年三月五日の経過により消滅し、また、道路交通法施行令別表第二・備考の定めによれば、本件処分の日から一年を経過した日の翌日以降、原告が本件処分を理由に道路交通法上不利益を受ける虞がなくなったことはもとより、他に本件処分を理由に原告を不利益に取扱いうることを認めた法令の規定もないから、行政事件訴訟法九条の規定の適用上、原告は本件処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有しない(最高裁昭和五五年一一月二五日第三小法廷判決、、民集第三四巻第六号七八一頁)。

二結論

よって、本件訴えは不適法であるからこれを却下することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条に従い主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官牧弘二 裁判官横山秀憲 裁判官家令和典)

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